尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのに時間がかかる

排尿(困難)症状

排尿に関わる症状は、排尿症状、蓄尿(ちくにょう)症状、排尿後症状に分けられます。排尿症状は、尿を出すことに問題がある症状で、「尿が出にくい」、「尿の勢いが弱い」、「尿をするのにお腹に力をいれる」などです。蓄尿症状は、尿を溜めることに問題がある症状で、「尿が近い」、「夜間排尿のために起きる」、「尿がもれる」などです。また、排尿後症状とは、排尿した後の症状で、「残尿感:排尿後にまだ膀胱に尿が残った感じ」、「排尿後尿滴下:排尿後下着をつけてから、尿が少しもれてくる」といったものです。多くの方が、様々な排尿の問題を抱えていますが、通常はこれらの症状が複合してみられます。

排尿症状をきたす原因

「尿が出にくい・尿の勢いが弱い・尿をするのにお腹に力を入れる」などの排尿症状は、膀胱から尿道出口への尿の通過が妨げられる場合(通過障害)、あるいは膀胱がうまく収縮できない(膀胱収縮障害)場合に起こります。通過障害で最も頻度の高いものは男性における前立腺肥大症で、膀胱収縮障害は男女とも神経因性膀胱で起こります。また、膀胱収縮障害は、メタボリック症候群に伴う膀胱の血流障害や加齢による膀胱の老化現象としてみられることもあります。

前立腺肥大症

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲む臓器で、精液の一部を産生します。前立腺が肥大すると尿道を圧迫して、尿の通過障害をきたし、排尿症状を引き起こすとともに、頻尿、夜間頻尿、残尿感などの蓄尿症状や、排尿後症状も起こします。前立腺肥大症は加齢とともに有病率(ゆうびょうりつ)が増加し、70歳代では10人に1人以上が前立腺肥大症と診断されます。

膀胱収縮障害をきたす神経因性膀胱

神経因性膀胱とは、神経の疾患により膀胱の運動をコントロールする神経が障害を受けるために、膀胱の働きが障害される状態をいいます。膀胱収縮障害をきたす原因疾患としては、糖尿病による末梢神経障害(膀胱の神経も含む)、腰部椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症による膀胱への神経の圧迫、子宮がん・直腸がん手術における膀胱への神経の損傷などがあります。膀胱の収縮が障害されるために、うまく尿を出せず、排尿症状を中心として様々な症状を引き起こします。

対処

以上のように、排尿(困難)症状は、男女ともに起こり、原因としては様々なものがあります。症状から原因を知ることは難しいので、生活に支障がある、困るような症状がある場合には、泌尿器科専門医を受診していただければ、原因を明らかにして、薬物治療を含む治療法の説明を受けるとともに生活の注意点も指導してもらえます。また、最近は前立腺がんの罹患率が急速に増えています。男性で排尿困難のある場合には、前立腺がんのチェック(血液検査で前立腺特異抗原:PSAの測定を行う)も受けることをお勧めします。