精液が赤くなった、精液に血が混じる

血精液症とは

血精液症とは、精液に血液が混入し、精液が赤色調を示す状態のことを指します。射精した際に気づくことになりますので、急な変化に驚いたり、心配になる方も少なくありません。多くの場合痛みなど他の症状は伴いませんが、精液の色調は鮮紅色が混ざったものから茶褐色調まで様々で、時に凝血塊(血の塊)が混ざることもあります。茶褐色の場合は出血してからしばらく時間経過したのものであると考えられます。精液は精子と精嚢(せいのう)および前立腺の分泌液から成りますが、その大部分は、精嚢と前立腺の分泌物が占めていますので、出血部位としては多くの場合精嚢または前立腺になります。

血精液症の原因

検査をしても原因がはっきりしない特発性とされるものが多くを占め、おそらく前立腺や精嚢に存在する微小な血管からの出血と考えられます。最近では前立腺がんの診断の際に行う前立腺生検後に生じるものが実際には多いようです。前立腺生検では前立腺に直接針を刺しますので、検査後射精する機会があれば高率に血精液症を認めます。検査前にあらかじめそのようなことが起こることを知っておいたほうが安心でしょう。ほとんどは特に治療せずに軽快しますが数週間程度かかることもあります。そのほか頻度は低くなりますが、重要な原因として精嚢または前立腺の炎症、うっ血などの局所の循環障害、尿路性器(精巣・精嚢・前立腺・尿道)の腫瘍や結石などが挙げられます。

診断と治療

診断は患者さんの訴えにより容易ですが、射出した精液を持参していただき肉眼的な観察や検尿用のテステープを用いるとより確実です。診察では腹部と精巣・精巣上体などの外陰部診察と直腸診で前立腺や精嚢に異常があるかを調べます。超音波検査で前立腺や精嚢、膀胱などの状態を調べることもあります。尿路感染症の有無をみるために検尿を行います。超音波検査等で異常を認めたり、腫瘍の存在が疑われる場合は更にCT、MRIなどの画像検査を追加することがあります。また、中高年以上の方は前立腺癌の有無を調べるためPSAという腫瘍マーカーの採血を行います。

特発性の多くは特に治療せずに自然に軽快しますが、色調が完全に元に戻るのには数週間程度など長くかかることもあります。鮮紅色の出血が長引くようであれば対症的に止血剤の投与を行ったり、背景に前立腺炎など感染や炎症があり、痛みなど他の症状を伴う場合は抗菌薬や抗炎症薬を投与することがあります。腫瘍や結石など明確な原因が判明した場合はそれぞれに応じた治療が行われます。ただし、血精液症がきっかけで癌が見つかる確率は高くありませんので、余り心配する必要はありません。

患者さんへのアドバイス

多くの場合は特に治療を必要としませんが、症状が長く続いたり出血量が増加するような時、また悪性腫瘍の発生が多くなる高齢者は、泌尿器科の受診をお勧めします。若い方の場合、血精液症があってもパートナーへの悪影響はありませんが、コンドームを使用したり、内性器の安静のために少し性交は控えた方が良いでしょう。

竹内修二、膀胱と尿道、高久史麿ほか監修、六訂版家庭医学大全科、法研、2010