理事長メッセージ

この度、日本泌尿器科学会の新理事会にて、理事長に選任して頂きました。大変光栄に存じますと同時に身の引き締まる思いでございます。歴代の理事長が泌尿器科学会の発展のためになされてきたご努力を無駄にせぬよう尽力いたしたいと存じます。

超高齢化社会のまっただ中にある我が国において、泌尿器科という診療科のニーズはますます高まっております。その事を反映してか、日本泌尿器科学会は会員数が9000名を超える規模にまで成長いたしました。我が国における泌尿器科学の発展は、皮膚泌尿科学から独立して以来、諸外国とは少し異なった形で進んで参りました。すなわち、非常に専門性の高い外科系診療科であると同時に、排尿障害や男性更年期障害などを含めた内科的診療まで幅広い領域をカバーする診療科として発展してきました。従って、対象疾患領域は、泌尿器癌(前立腺癌、腎癌、尿路上皮癌、精巣癌など)、腎移植や人工透析などの腎疾患、尿路感染症、前立腺、副腎、精巣などに関連した内分泌疾患、排尿障害、男性更年期、生殖医療、小児泌尿器科など多岐にわたります。これらの広い領域を高い専門性をもって推進、発展させていくために、15の専門領域部会を設けて学会運営を行っております。この多様性と高い専門性が泌尿科学会の大きな特徴であり、研究領域の発展にも大きく寄与するとともに国民の医療、福祉に大きく貢献してきたと言えます。

現在、日本専門医機構による専門医制度における基本領域学会の一つとして確固たる地位を確保し、しっかりとした教育プログラムを構築し、各領域の医療を担う優秀な専門医の育成を行っております。この教育プログラムは学問的に多様性に富む泌尿器科学が全体として発展していけるように構築されています。学会が運用するホームページ上での様々な教育コンテンツや学術集会における教育プログラムは他学会との境界領域をも含んだものでありますが、それぞれの専門領域におけるエキスパートあるいはオピニオンリーダーといえる先生方に創案、監修をして頂いて作成されています。これらの教育活動によって、我が国の次世代の泌尿器科診療と研究を支える泌尿器科専門医が育成されるものと確信しております。

学会の発展に伴って、国際化も高まってきております。海外の学会に参加して発表される若手の先生、また指定演題や座長を務められるベテランの先生方も増えてきました。間違いなく、諸外国から見て我が国の泌尿器科診療、研究のレベルは高く評価されています。本学会が発行するInternational Journal of Urology (IJU) はアジア泌尿器科学会のオフィシャルジャーナルでありますが、熱心な編集委員の先生方の努力でそのインパクトファクターは2.4を超えるまでになり、間違いなく諸外国からの認知度が上がってきました。また症例報告のみを取り扱うIJU Case Reportは、若手泌尿器科医が英文で症例報告を投稿する良い窓口であり、また泌尿器科医として学問的にも一人前になるための登竜門といえるでしょう。一人でも多くの会員に国際性豊かな泌尿器科医となって欲しいと願っています。

これまで日本泌尿器科学会ではがん登録事業が行われておりましたが、その悉皆性は低く、日本における癌の疫学調査として充分とは言えないものでありました。前任の大家理事長の時からNational Clinical Database (NCD) への加入が決まり、専門医制度における教育機関と紐付けることで登録の悉皆率が向上しました。NCD事業への参画は、我が国における泌尿器科診療の実態把握、優れた診療実績の発信、ひいては診療報酬への反映を通じて医療の質向上に繋がると思います。いよいよ蓄積されたデータを基にリスクカリキュレーターの構築や様々な医師主導研究への利活用を行うべき次期に来ていると考えます。

以上述べて参りました日本泌尿器科学会の様々な活動を通じて、全国の泌尿器科医の皆様が高い専門性をもって、学問、臨床の場において国内外にてご活躍頂けるよう学会運営を進めてまいりたいと思いますので、どうかご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座(泌尿器科学)教授
野々村祝夫