理事長メッセージ

この度、第110回日本泌尿器科学会総会(神戸)の会期中に行われました新理事会にて理事長に選任して頂きました。大変光栄に存じますとともに重責を担うこととなり身の引き締まる思いでございます。

一般社団法人日本泌尿器科学会の会員数は現在約9700名を越えまして、毎年約300名前後の新たな専攻医が入会しておりますので、まもなく10000人に達しようとしております。昨今全身の多くの領域において診断、手術、薬物療法等が分業化してきておりますが、泌尿器科領域においては診断から手術、そして薬物療法に至るまで泌尿器科医によってほぼ完結しているところに、諸外国とは異なった我が国における泌尿器科学の発展の歴史があると思われます。対象疾患領域は泌尿器癌(前立腺癌、腎臓癌、尿路上皮癌、精巣癌など)、尿路感染症、腎移植や人工透析などの腎疾患、排尿障害、副腎などに関連した内分泌疾患、男性更年期、生殖医療、女性泌尿器科、小児泌尿器科など多岐にわたります。日本泌尿器科学会はこのように広い専門分野を内包しておりますが、15の専門領域部会が高い専門性をもとに学会運営を行っております。基礎・臨床研究を推進し、泌尿器科学をさらに発展させるとともに医療安全にも十分に配慮して国民の福祉と健康に貢献していく所存です。

日本専門医機構が定める基本領域学会の一つとして、将来を担う泌尿器科医の育成を学会の使命として進めていきます。このための教育プログラムは学問的に多様性に富む泌尿器科学が全体として発展できるように構築されておりますし、他学会との境界領域も含んでおります。それぞれの専門領域のエキスパートやオピニオンリーダーの先生方が企画、創案した教育コンテンツや学術集会における教育プログラムは学会のホームページから容易に見ることができます。これらの教育活動を通して、泌尿器科の診療だけでなく研究も発展させていける次世代の泌尿器科専門医の育成を進めていきたいと考えております。

新型コロナウイルス感染症も第5類の扱いとなり、ようやく落ち着いてきた感がありますが、この新型コロナに翻弄された3年間で最も大きな影響を受けたのが国際交流でした。学会でも海外の演者はオンライン参加が当たり前でしたが、第110回日本泌尿器科学会総会では対面で参加する多くの海外演者を迎えることができました。その翌週に行われたAUAにおいても発表する若手医師や司会や座長を行うベテラン医師を多数拝見致しまして、漸く通常の状態に戻ってきた実感があります。国際交流においてはAUAやEAUとの交流だけでなく、アジアにおける日本泌尿器科学会のプレゼンスの向上にも注力したいと考えております。そのためには各大学、サブスペシャリテ学会の国際交流の現状を学会としてまず把握し、アジア各国との連携に対する日本泌尿器科学会のスタンスを明確化していきたいと考えております。本学会が発行するInternational Journal of Urology(IJU)はアジア泌尿器科学会のオフィシャルジャーナルでもあり、編集委員の先生方のご努力もあり、最新のインパクトファクターは2.896まで上昇しております。アジアにおけるトップジャーナルとしての地位を着実に築いてきておりますが、今後もさらに発展させていくことが重要であると考えております。

本学会においても女性医師は増えてきており、現在会員全体に占める割合は8.9%に達しております。前任の野々村理事長の時に女性理事枠を作ることが承認され、今回初めて2人の女性理事が誕生致しました。女性理事にも日本泌尿器科学会の各種委員会の委員長になって頂き、積極的に学会運営に携わってもらいます。またダイバーシティ推進委員会を中心に女性泌尿器科医の活躍に対する施策として、ポジティブ・アクション、イクボス等を更に推進して、将来に向け女性医師雇用推進、再雇用、就労継続に向けた取り組みを進めていきたいと考えております。医師の働き方改革への対応も待ったなしの状況にあると思われます。様々な特性・背景を持った人材が泌尿器科医を目指し、それを維持できる環境についてもダイバーシティ推進委員会を中心に整備していく所存です。

以上述べましたような方向性をもって日本泌尿器科学会の運営を進めて参りますが、学会のさらなる発展を目指して邁進して参る所存ですので、皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

九州大学大学院医学研究院泌尿器科分野 教授
江藤正俊